健康・福祉の情報発信「いきいき倶楽部」


1)結核は過去の病気?

明治時代から昭和20年代までの長い間、『国民病』『亡国病』として恐れられた結核。
医療や生活水準の向上により、今では薬を飲めば完治できますが、まだまだ過去の病気とは言えません。
2011(平成23)年に、新たに結核と診断され登録された患者数(結核新登録患者数)は22,681人、結核で亡くなった人の数(結核死亡数)は2,129人。
1日に64人の新しい患者が発生し、6人が命を落としている重大な感染症です。

<日本における結核の問題点>

若者の結核も要注意
  若者の集団感染が問題になっている。
働き盛りの人の発見が遅れる
  働き盛りの世代の発見の遅れは、次世代に結核を残すことになる。
外国人の割合が拡大している
  結核対策が十分に行われていない開発途上国から入国する若者の結核が増えている。
感染者がますます高齢化
  1990年代は60代が一番多かったが、2001年には70代、2006年には80代に移行。
地域格差がある
  大都市部に集中する傾向があり、国内の地域間格差が大きい。
HIV・AIDSとの合併の危険
  HIV感染者やAIDS発症者に結核菌が感染すると、命取りになる。

                   

2)感染と発病

結核とは、結核菌によって主に肺に炎症が起こる病気です。
まず、結核菌が肺の内部で増えて、肺が腫れてしまいます。続いて肺が壊れていき、呼吸する力が低下します。肺以外の臓器が冒されることもあり、腎臓、リンパ節、骨、脳など体のあらゆる部分に影響が及ぶことがあります(肺外結核)。

結核は重症患者の咳などで菌が飛び散り、周りの人が菌を直接吸い込むことで『感染』します。
吸い込まれた結核菌の大半は鼻、のど、気管支などに付着しますが、そこにある絨毛の働きによって体外へ排出されます。排出されなかった結核菌が肺まで侵入すると『感染』しますが、感染しても必ず『発病』するわけではなく、通常は免疫力により結核菌の増殖を抑え込みます

発病』とは感染した後、結核菌が活動を始め、菌が増殖して体の組織を冒してゆくことです。
症状が進むと、咳や痰と共に菌が空気中に吐き出されるようになります。
これを『排菌』といいますが、感染・発病しても『排菌』していない場合は、他の人に感染させる心配はありません。
        

感染した人が発病する確率は、5~10%といわれています。感染してから2年くらいの内に発病することが多いとされており、感染者の60%くらいが1年以内に発病しています。
その一方、感染後の数年~数十年後に結核を発病することもあり、いつ発病するかわからないというのが実状です。どういう理由で結核菌が増え始めて発病するのかは、まだよくわかっていません。

ただし、抵抗力が落ちている人(高齢者、過労、栄養不良、他の病気による体力低下等)は、注意が必要です。抵抗力が弱まっているときは、結核菌が再び活動を始め、発病しやすい状態と考えられています。
結核の予防は、普段から健康的な生活を心がけて、免疫力を高めておくことが重要です。
不規則な生活や運動不足、偏った食事、喫煙、睡眠不足等は、免疫力を低下させます。

また、抵抗力の弱い乳児が結核に感染すると重症になりやすいので、必ずBCG接種を受けましょう
市町村からの案内に従って、なるべく5~7ヵ月以内に、遅くとも1歳の誕生日までには接種を済ませましょう。

なお、結核菌は紫外線に弱く、体外に排出された菌は日光に当たると数時間で死滅します。



3)もし感染したら

結核の初期症状はカゼと似ていますが、咳、痰、発熱(微熱)などの症状が長く続くのが特徴です。
また、体重が減る、食欲がない、寝汗をかくなどの症状もあります。さらにひどくなると、体のだるさや息切れ、血の混じった痰などが出始め、呼吸困難に陥って死に至ることもあります。
2週間以上、咳や痰、微熱が続くようなら、早めに病院にかかりましょう

昔は多くの方が亡くなった結核ですが、今は薬(抗結核薬等)が開発され、きちんと薬を飲めば治ります。ただし、治療途中で薬を飲むのをやめてしまったり、指示された通りに薬を飲まなかったりすると、結核菌が薬に対して抵抗力(耐性)を持ってしまい、薬の効かない結核菌(耐性菌)になってしまう可能性があります。
結核と診断されたなら、医師の指示を守って、治療終了まできちんと薬を飲み続けることが最も重要です。

                


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