自己免疫疾患


 1)自己免疫疾患とは 

   自己免疫疾患とは、免疫システムの機能が不良となって体が自分の組織を攻撃してしま
   う病気
です。
   正常な免疫システムは、自己と非自己(異物)を区別することができ、
抗原と呼ばれる異
   物に対して反応します。
   細菌、ウイルス、その他の微生物、がん細胞などは、その細胞の中や表面に抗原を持っ
   ています。
   花粉や食物の分子のように、それ自体に抗原性があるものもあります。
   しかし、免疫システムが機能不全を起こすと、
自身の組織を異物と認識して、自己抗体と
   呼ばれる異常な抗体や免疫細胞を作り、
体内の特定の細胞や組織を標的的にして攻撃
   してしまいます。
   この反応は
自己免疫反応といい、炎症や組織の損傷を招きます。
   自己免疫疾患は種々あり、さまざまな細胞や組織が攻撃の対象になります。



<主な自己免疫疾患>
病名 主に侵される臓器 症状と経過
自己免疫性溶血性貧血 赤血球 疲労、脱力感、頭のふらつきを伴う貧血。
脾臓肥大。重症または致死的な貧血。
水疱性類天疱瘡 皮膚 周りが赤く膨れ上がった大きな水疱が皮膚に発現。
治療すれば経過は良好。
バセドウ病 甲状腺 甲状腺の炎症、刺激、肥大の結果、甲状腺ホルモン値が上昇(甲状腺機能亢進)。
治療すれば経過は良好。
橋本甲状腺炎 甲状腺 甲状腺の炎症や損傷の結果、甲状腺ホルモン値が低下(甲状腺機能低下)。
甲状腺ホルモンによる治療が生涯必要。
1型糖尿病 膵臓のベータ細胞
(インスリンをつくる細胞)
ベータ細胞が破壊されるためにインスリンが不足。
膵臓の細胞が破壊されているので、反応が消えても生涯インスリン治療が必要。
全身性エリテマトーデス
(SLE)
関節、腎臓、皮膚、肺、
心臓、脳
しばしば損傷を伴う組織の炎症。
関節は炎症を起こすが変形はしない。
経過はさまざまだが、患者の大半は疾患が再燃するものの、活動的な生活を送ることが可能。
重症筋無力症 神経と筋肉の結合部
(神経筋接合部)
筋肉、特に眼の筋肉が弱り、疲れやすくなる。
症状の程度はさまざま。
進行のパターンには個人差があるが、通常は薬でコントロールできる。非致死的。
天疱瘡 皮膚 皮膚に大きな水疱ができる。ときに致死的。
悪性貧血 胃粘膜の細胞、赤血球、白血球 胃粘膜の損傷により、成熟血球の産生に必要なビタミンB12の吸収が悪くなる。
貧血と神経損傷があり、治療をしないと脊髄が損傷。
胃癌のリスクが増大。治療により経過は良好。



 2)原因 

   自己免疫反応が起こるのは、以下のような場合です。

    ・正常な状態では体内の特定の領域にあって、免疫システムには見つからないはず
    の物質が血流に放出された場合

                              
      たとえば、眼を強打すると眼球中の液体が血流中に放出され、この液体が免疫シス
      テムを刺激して攻撃を引き起こします。



    ・体内の正常な物質がウイルス、薬、日光、放射線などによって変質した場合
                           ↓

      変質した物質は、免疫システムには異物とみなされます。
      たとえば、ウイルスは体内の細胞に感染して細胞を変質させ、その細胞が免疫シス
      テムを刺激して攻撃を引き起こします。



    ・ある体内物質に似た異物が体内に侵入した場合
                           ↓

      免疫システムは見分けがつかなくなり、異物だけでなく、その体内物質も攻撃してし
      まいます。


    ・抗体の産生をコントロールする細胞、たとえば白血球の1種であるBリンパ球が
     機能障害を起こし、正常な体内細胞を攻撃する異常な抗体をつくる場合
                           ↓

      自己免疫疾患には、遺伝するものもあります。
      病気そのものが遺伝するのではなく、自己免疫疾患に対する感受性(かかりやすさ)
      が遺伝
します。
      感受性の強い人は、ウイルス感染や組織損傷などが引き金となって疾患を発症する
      場合もあります。
      多くの自己免疫疾患が女性に多くみられることから、ホルモンも関与していると考え
      られています。


                  


 3)症状と診断 

    自己免疫疾患は、一般的に発熱を伴います。
    しかし、その症状は疾患の種類侵された部位により変わります。
    たとえば、血管、軟骨、皮膚などの特定の組織が全身にわたって侵される疾患もあれば、
    ある種の器官だけが侵される疾患もあります。
    これには腎臓、肺、心臓、脳など、ほぼすべての器官が該当します。
    発症すると炎症と組織損傷が現れ、痛み、関節の変形、筋力低下、黄疸、かゆみ、呼吸
    困難、浮腫、せん妄が現れて、ときには死亡することもあります。

    自己免疫疾患は、
血液検査
で発見できます。
    たとえば、炎症があると、それに反応してつくられるタンパク質が赤血球の血液中にとど
    まる能力を抑制するので、赤血球沈降速度(ESR)が高くなります。
    また、血液検査により、自己免疫疾患に固有の抗体を見つけることができます。

    こうした抗体の例としては、細胞の核を攻撃する抗核抗体やリウマチ因子があります。
    治療は、
免疫システムを抑制して自己免疫反応を制御
します。
    しかし、自己免疫反応の制御に使われる薬の多くは、一方で体が感染症などと闘う能力
    を妨げてしまいます。
    このほか、症状を和らげる治療も必要です。

    自己免疫疾患の中には、自然治癒するものがあります。
    しかし、ほとんどの自己免疫疾患は慢性で、一生薬を使って症状をコントロールする必要
    があり、その経過は疾患によりさまざまです。


                  



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