肺と気道の病気


 1)はじめに 

   
肺と気道の病気を、肺疾患または呼吸器疾患といいます。
   正確な診断をするために、その症状に応じて必要な検査を行います。
   咳、息切れ(呼吸困難)、呼吸時のゼイゼイ、ヒューヒューという音(喘鳴(ぜいめい))など
   が、肺の病気でよくみられる症状です。
   また、咳とともに血を吐いたり(喀血(かっけつ))、血液中の酸素が足りないために皮膚
   の色が青っぽく変化したり(チアノーゼ)、胸に痛みを覚えたりします。
   肺の病気が長びくと、指がばち状に変化するなど
全身の他の部分に変化が
   起こることもあります

   ただし、こうした症状は呼吸器疾患のみで見られるわけではありません。
   胸痛は心疾患や消化器疾患で、息切れは心疾患で起こることもあります。




 2)咳 


   咳は急激に空気を吐き出す動作で、気道から異物を除去する働きをします。
   咳は日常的にしている動作ですが、実際には複雑な反射反応で肺と気道を
   保護する大切な手段
です。
   咳は他の防御機構とともに、吸いこんだ粒子から肺を保護します。
   細菌やウイルスによる呼吸器感染症は気道に炎症を起こし、よく咳が出ます。
   アレルギー性物質も気道に炎症を起こします。
   タバコを吸う人が咳をするのは、タバコの煙に対する反応とタバコの煙によって
   気道の異物を除去する髪の毛状の突起(線毛)など、気道を覆っている細胞が
   ダメージを受けるためです。
   咳と一口に言ってもその症状はさまざまで、タバコを吸う人にみられるように咳
   が数十年も続いているのに、自分では咳をしていることを自覚していない場合
   もあります。
   咳に関する次のような情報は、医師が診断を確定するのに役立ちます。
 
     
    
・咳が続いている期間は。 
    ・1日のうち、咳が出る時刻は。 
    ・冷たい外気、特定の姿勢、会話中など何かをきっかけに咳が出るか。 
    ・胸痛、息切れ、しゃがれ声、めまい、喘鳴などと一緒に起こるか。 
    ・咳をするとたんや血が出るか。出るとしたら、たんの色は何色か。

                    

   たんの状態も、診断の際に役立ちます。
   黄色や緑色、茶色がかったたんは、細菌感染を意味します。
   透明で粘り気の強いたんは、喘息に特徴的です。
   出血を伴う咳では気管支炎を疑いますが、肺癌の場合もあります。
   咳にはたんを吐き出し気道をきれいにする重要な役割があるので、大量のたん
   を伴う咳を安易に抑えるべきではありません

   それよりも感染症、肺への液体貯留、喘息など咳の根本的な原因を治療するこ
   とが重要です。
   咳の程度や原因によって、必要な薬も変わってきます。



 3)呼吸困難(息切れ) 

   呼吸困難とは呼吸が困難な苦しい状態のことで、息切れともいいます。
   呼吸困難によって呼吸が速くなると空気が足りないような感じがして、いくら速く
   深く呼吸しても十分ではないという感覚に襲われます。
   他にも、息を吸う際に胸を広げ息を吐き出す際に空気を押し出す筋肉の負担が
   増加したように感じたり、完全に息を吐き終わる前に急いで息を吸いこまなくては
   いけないと感じ落ち着かなくなります。
   胸が締めつけられるような、さまざまな感覚も起こります。
   肺に病気のある人の多くは、体を激しく動かしたときに呼吸困難を経験しますが、
   病気が悪化すると安静時でも呼吸困難が起こります
   特発性肺線維症などの拘束性の肺疾患では、肺が硬くなり、息を吸う際に十分
   に広がらなくなります。
   慢性気管支炎、肺気腫、喘息などの閉塞性肺疾患では、気道が普通よりも狭くな
   り空気が流れにくくなります。
   息を吸うときは気道が広がるため空気が中へと取りこまれますが、息を吐くときは
   気道が狭くなるため、空気が十分に肺から吐き出されず、呼吸は苦しくなります。
                

   心臓は肺へと血液を押し出すので、肺が正常に機能するためにも心臓はきちんと
   機能していなければなりません。
   
心臓の働きが低下すると肺の中に液体がたまり、肺水腫という病気になります。
   肺水腫は呼吸困難を引き起こし、胸に息苦しさや重苦しさを感じます。
   貧血や出血を来した人でも、酸素を組織へ運ぶ赤血球数が減少するために呼吸
   困難を起こします。
   血液中の酸素濃度を高めようと、反射的に速く深く呼吸します。
   重症の腎不全でも息切れを感じ、代謝性アシドーシスや心不全、貧血が起こるた
   め、浅く速い呼吸が始まります。
   過換気症候群では十分な空気を吸いこめないように感じるため、呼吸が激しく速く
   なります。
   この状態は主に、身体的な問題ではなく、不安が原因で起こります。



 4)喘鳴(ぜいめい) 

   喘鳴は、気道内部のどこかが狭くなっているために起こります。
   喘息や慢性閉塞性肺疾患などで全体が狭くなったり、腫瘍などによって一部が狭く
   なっていたり、気道内に異物がとどまっていることなどが原因です。
   周期的に起こる喘鳴は喘息が原因となっていることがほとんどですが、喘息ではな
   い人にもときどき喘鳴が起こります。

                  

    気道の一部の狭窄による喘鳴の場合、腫瘍や異物などのある領域を触診すると、
    深い呼吸をしたときに喘鳴と同時に振動が認められます。
    その人がタバコを吸っており、喘鳴が1カ所で持続している場合は、肺癌の疑いが
    あります。
    肺癌が胸部X線検査で確認できない場合は、気管支鏡検査を行います。
    肺機能検査は気道がどの程度狭くなっているかを測定し、治療の有効性を判断す
    るために必要です。




 5)喀血(かっけつ) 

   気道から出血した血液が咳とともに吐き出されることを、喀血といいます。
   感染症が原因で起こることがほとんどですが、原因不明で大量の血がたんに混ざっ
   ている場合は、医師の診察を受ける必要があります。
   腫瘍、特に肺癌は喀血のみられる症例の20%を占めています。
   40歳以上の喫煙者(および、40歳以下であっても10代でタバコを吸いはじめた人)
   喀血を起こした場合は、それがたんに血がにじむ程度であっても、肺癌の検査を受
   けるべきです。
   血の塊で動脈が詰まる肺塞栓症によって生じる肺組織の壊死(肺梗塞)でも、喀血
   を起こします。
   心不全や僧帽弁狭窄症と同様、肺静脈の血圧が高い場合にも、喀血を起こします。

                   


 6)チアノーゼ 

   チアノーゼは血液中の酸素の不足が原因で、指先や唇などの皮膚が青っぽい色
   に変化すること
をいいます。
   酸素を含んでいない血液は赤色というより青色に近く、その血液が皮膚の表面近
   くを流れているときにチアノーゼが起こります。
   先天異常をはじめ、肺や心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素濃度を低下させ
   るので、チアノーゼを起こします。
   なぜチアノーゼを起こすような血液中の酸素の減少が起こるのか調べるため、胸部
   X線検査、血液流量検査、肺や心臓の機能検査が必要です。




 7)ばち指 

   ばち指とは、手や足の指のつま先が幅広くなって爪の付け根(爪床)の部分の角度
   がなくなった状態
をいいます。
   ばち指(太鼓ばち状の指)は、爪床の下にある軟らかい組織が隆起して起こります。
   原因は不明ですが、肺癌、肺膿瘍、気管支拡張症などの肺疾患によって起こると考
   えられています。
   肺炎、喘息、肺気腫などの肺疾患では、ばち指にはなりません。
   先天性心疾患でばち指がみられることもありますが、遺伝によるもので病気の徴候
   ではないこともあります。
                

「ばち指」の見分け方

 指先が幅広くなり、爪の付け根(爪床)の
 角度に異常がある状態を、太鼓のばち
 に似ていることからばち指といいます。




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