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5)直腸ルート

経口で投与する薬の多くは、座薬として直腸から投与することもできます。
薬を水溶液、または油性物質と混合して液化させた状態で、直腸に挿入します。
直腸の壁は薄くて血液供給が豊富なので、薬はすぐに吸収されます。

座薬は、経口投与が難しい乳幼児や吐き気や嚥下(えんげ)困難があったり、外科手術後の食事制限のために薬を内服できない人たちなどに必要に応じて処方されます。
座薬にすると刺激性がある薬は、注射で投与しなければなりません。

                  

6)経膣ルート

薬の中には、溶液や錠剤、クリーム、ゲル、座薬の形で女性に経腟的に投与するものがあります。
薬はゆっくりと腟壁から吸収されていき、更年期の女性にエストロゲンを投与する時に、しばしばこの経路を使います。
この薬には、更年期の作用で腟壁が薄くなるのを防ぐ効果もあります。



7)眼のルート

緑内障や結膜炎、単純ヘルペス感染症、外傷など眼の病気の治療に使う薬は、不活性物質と混ぜて液体やゲル、軟膏にすれば眼に塗ることができます。
液体の点眼薬は比較的使いやすいのですが、眼から流れ落ちるのが速すぎて十分に吸収されないおそれがあります。

例えば、ドライアイを緩和するときは人工涙液を使うなど、眼の薬のほとんどは局所効果を得るため用いられます。
アセタゾラミドやベタキソロール等緑内障の治療に使用する薬や、フェニレフリンやトロピカミドなど瞳孔を開くのに使用する薬等は、角膜や結膜から吸収されて局所効果を現します。
しかしこれらの薬には、血流に乗って体内の他の部分で副作用を起こすものもあります。



8)鼻のルート

鼻腔を覆っている薄い粘膜から薬を吸いこんで吸収する場合は、薬をきわめて小さな液滴、つまり霧状にする必要があります。
薬は吸収されると血流に入るので一般にこのルートで投与する薬はすぐ効きますが、中には鼻腔を刺激するものもあります。

この方法で鼻粘膜から投与する薬には、ニコチン(禁煙用)、カルシトニン(骨粗しょう症用)、ジヒドロエルゴタミン(片頭痛用)、ステロイド薬(アレルギーや喘息用)などがあります。

                   

9)吸入

亜酸化窒素など全身麻酔に使用するガスは、吸入投与します。
口から吸入する薬は、鼻で吸いこむ薬よりもさらに小さな微粒子にしなければなりません。
薬は気管を通って肺に到達しますが、肺のどのくらいの深さまで行くのかは液滴の大きさによります。

液滴が小さければ小さいほど深い所まで届き、肺の内部で血液中に吸収されます。
患者が特定の時間内に適正な量の薬を吸入できたかどうか、注意深くモニターしなければならないことから、この方法で服用する薬はあまりありません。

通常は、エアロゾル化された喘息の薬など、肺に作用する薬を定量噴霧器で投与するときに、この方法を使います。

                  

10)皮膚ルート

皮膚に塗る薬局所効果を得ることが目的なので、乾癬や湿疹、皮膚感染(ウイルス、細菌、真菌)、かゆみ、乾燥肌などの表在性皮膚疾患の治療に最も多く使われています。
この種の薬は不活性物質と混ぜて使い、不活性物質の粘度に応じて、軟膏、クリーム、ローション、溶液、パウダー、ゲルといった製剤があります。



11)経皮ルート

薬の中には、皮膚に貼ったパッチ剤から吸収され、体全体に運ばれるものもあります。
これらの薬を、皮膚の浸透を良くするアルコールなどの化学薬品と混ぜ合わせると、注射をしなくても皮膚から血液中に吸収されるようになります。

パッチ剤を使えば、薬をゆっくりと絶え間なく、数時間から数日、あるいはもっと長い時間をかけて投与でき、血液中の薬の濃度を比較的一定に保つことができます。
パッチ剤は人によっては皮膚を刺激しますし、薬が皮膚に浸透する速さによる制約も受けますので、1日量が比較的少ない薬しかパッチ剤では投与できません。

このような薬には、ニトログリセリン(狭心症用)、スコポラミン(乗物酔い用)、ニコチン(禁煙用)、クロニジン(高血圧用)、フェンタニル(痛みの緩和用)などがあります。

                 


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