福祉用具①

 1)福祉用具とは 

   介護保険においての『福祉用具』は、
『要介護者・要支援者の日常生活の便宜をはかるた
   め、および機能訓練のための用具で、彼らの日常生活の自立を助けるためのものの中か
   ら、厚生労働大臣が定めるもの』
とされています。
   もともとこの『福祉用具』という言葉は、『福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法
   律』(福祉用具法)の第2条で、『高齢者・障害者の日常生活上の便宜をはかり、機能訓練
   を行うための、用具・補装具を言う』として定義されている用語です。
   介護保険制度は2000年4月スタートですので、介護保険法においても、後から定義づけが
   されたことになります。

   介護保険制度においては、
『福祉用具の貸与』『福祉用具の購入費の支給』が、『在宅サ
   ービス』のひとつとして定められています。
   介護の度合いが時間が経つにつれて変化してくることも考えて、
原則は『貸与(レンタル)』
   再利用できないような用具については
例外として『購入』とすることを、基本的スタンスとして
   います。
   要介護度が軽く利用の必要性が薄い者に対して、明らかに不適切な福祉用具が給付され
   たなど行き過ぎのケースが過去に見られたこともあって、介護保険制度では、
       ・「介護保険における福祉用具選定の判断基準」
        ・「介護保険における福祉用具給付の判断基準」
        ・「介護保険対象外種目と例外該当者」

   といったガイドラインが、それぞれ設定されています。

   ちなみに『福祉用具』の中には、義肢などの補装具や車いすなど『自立支援法』等の法律
   にもとづいて、行政・公的機関から支援・給付されるものもあります。
   ただし介護保険など他の制度にも該当する品目の場合は、給付にあたっては原則として、
   それら他の制度が優先適用されます。
   大まかには、『介護用品』『介護機器』は、『福祉用具』を含んだ上でさらに一層幅広い品目
   を指していて、いずれの言葉が使われていても
介護保険が適用されるものとされないもの
   がある
と考えておけばよいでしょう。

                        



 2)購入・レンタル時の注意 

     

   『福祉用具』の使用目的をおおまかに分類すると、以下のようになります。
   『福祉用具』については、次回詳しく説明します。


 排泄の自立支援・介護 腰掛便座・特殊尿器など、トイレ・紙おむつ関連用品
 入浴の自立支援・介護 簡易浴槽・入浴補助具など、入浴関連用品
 床ずれ予防・対策 介護ベッド〔特殊寝台〕・体位変換機など、寝具関連用品
 移動の自立支援・介護 車椅子・歩行器・移動用リフトなど、歩行・移動関連用品
 食事の自立支援・介護 食事補助具、食器、エプロン、食品・健康関連用品
 生活用具 介護予防・トレーニンググッズなど
 コミュニケーション 認知症老人徘徊感知機器などの通信・報知装置・コミュニケーション道具など


   介護保険が適用される『福祉用具』の場合、利用者は1割の負担でレンタル・購入すること
   ができます。
   レンタル・購入時における消費税については、基本的にはかかりますが、
『身体障害者用物
   品』のレンタル・購入については、消費税が非課税
となっています。

   『身体障害者用物品』とは、身体障害者用として特殊な形状・構造・機能を持った物品のこと
   です。
   具体的には、義肢・義眼・補聴器・車いす・特殊寝台・体位変換器・歩行補助つえ・移動用リ
   フト(つり具の部分を除く)・特殊尿器などの物品を指します。
   ただし、これらの物品ならば無条件に非課税となるわけではなく、この中において、一定の
   要件を満たしたもののみが非課税となります。

   複数の物品を購入し支出金額がまとまってきた場合などは、消費税も結構な負担になりま
   すので、何が課税され何が課税されないのかについても購入前にチェックし、課税されるも
   のについては、最初から予算に織り込んで考えておくのが無難でしょう。

   『介護用品・介護機器・福祉用具なら、なんでも介護保険が使えるわけではない』ことは、基
   本かつ重要なポイントですので注意してください。

   加えて、一見似たような機能の介護用品や福祉用具であっても、介護保険の対象外となる
   ものがありますし、対象物品であっても、その販売価格は店によって異なる場合もあります。
   また、介護保険以外に、市町村によっては、独自の購入助成や給付を行っている場合もあ
   ります。
   こういった制度は調べて利用しないと、その分無駄な出費につながることになります。

   以上を考えると、仮に介護保険を利用せずに全額を自費で対応するにしても、福祉事務所
   やケアマネジャー、介護保険指定事業所の福祉用具専門相談員などに相談した上で決定
   していくことが、いずれにせよ不可欠と言えるでしょう。

                    



 3)選択のポイント
 

   介護保険利用の有無に関わらず福祉用具を選ぶにあたっては、以下のような点に注意し
   ておきましょう。
      
   
①利用者本人の現在の状況を把握して、その意思を尊重する。

     介護が必要な高齢者は意思表示が困難な場合がありますので、家族や介護スタッフが
     利用者の行動をよく観察し、その福祉用具を使った場合に生活がどう変わるかについて
     本人の意思を尊重し、その能力と照らし合わせながら、判断していく必要があります。

   
②家族と一緒の場合、その生活へも影響を及ぼすため、家族の同意が必要。
     福祉用具の使用は、利用者本人だけの問題ではありません。
     その利用によって家族の生活の快適さが失われ、生活導線が不便になるようでは、めぐ
     りめぐって利用者にとってもよい結果をもたらすとはいえないでしょう。
     住環境や家族との生活といった面も考え合わせ、ケアマネジャーを交えて家族とよく話し
     合い、一緒に生活する家族の同意も得た上で、選択・購入・利用に踏み切る必要があり
     ます。

   
③普段から、介護機器の展示場などにも積極的に足を運んでおく。
     福祉用具は、実際に試したり相談したりする場が全国的にまだまだ少ないのが現状です。
     利用者自ら、または家族など関係者が、日頃から機会をとらえて介護用品・福祉機器の
     展示会や、福祉センター等が開催する福祉機器展示コーナー等に、積極的に足を運ん
     で実際に器具・用具に親しんでおきたいものです。
     最新の福祉機器の展示会などの開催情報をインターネットで入手したり、あるいは『在宅
     介護支援センター』や『介護普及センター』などから入手して、できるだけ実物を見て触れ
     る機会を日頃から増やしていくようにしたいものです。

   
④レンタル・購入どちらにおいても、お試し(試用)は必須。
     カタログを見ただけでいきなり購入することは、厳禁とすら言ってよいでしょう。
     利用者の日々の生活環境の元で試用し、本人に適合するかどうか、使いやすいと感じる
     か、対処できないほどに不便な点はないか等について確認する必要があります。

   
⑤日頃からケアマネジャーや福祉用具専門相談員との関係を深めておく。
     いざ介護保険を利用する時になってあわてて動き出すよりも、利用者が暮らす地域の
     『地域包括支援センター』で相談支援業務を行っていますので、差し迫った用件がなくとも
     まずは利用してみましょう。
     日頃から相談に通うことで、 社会福祉士や主任ケアマネジャーともある程度、顔なじみに
     なっておくこともできます。
     実際に利用する段階で必要な情報をすばやく得られるよう、ある程度ルートを作っておき
     たいですね。
     それは、本来、介護保険が想定する『介護予防』の実践にもつながることになるでしょう。
     『備えあれば憂いなし』ということです。

   
⑥利用者の生活環境をとりまく特有の事情についても、配慮する。
     北海道・東北といった雪国においては、冬の外出時に雪の多い環境・寒い気温の中で素
     手を出したり、しゃがんだりといった動作ですら、利用者にとって大きな負担となる場合が
     あります。
     また関東圏などでは、真夏に猛暑日が続く時、汗を拭くために片手をなるべく空けておき
     たいといった場合にも、介護機器を片手でスムーズに操作できるかなどの状況が想定さ
     れます。
     このように、春・秋に通常の使い方をしていた福祉用具が、季節変動によってはそのまま
     使用できないといった場合もありますので、改良や組み合わせでそのような外的状況の
     変化に対応できるかといった点にも、選択にあたっては配慮する必要があります。



                          



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